その映像(ビジョン)は、突然頭の中に現れたモノだった。
逃げ惑う人々と、湧き上がる悲鳴。
人々に向かって、静かに両腕を上げる、長髪の男。
「何コレ?」
不意に嗚咽が込み上げてきて、私は手を口元にあてた。
沢山の人々の、屍骸の山。
動く事のない、肉の魂(かたまり)達。
見たくなんてないのに、頭の中に克明に映し出される。
「嫌…」
気付くと、目からは涙が溢れ出していた。
『消えて、消えて、消えてよ…』
心の中で、繰り返す。
ようやく映像が消えた時、私はその場に倒れ込んでいた。