「ダメだよ」
私が、足を踏み出そうとした瞬間、その声は聴こえた。
「どうして止めるの?」
振り向かずに、私は言った。
「私が嫌だからだよ」
声が答えた。
「そう。でも私も嫌なの」
私はそう言って、足を踏み出した。
何も無い、空に向かって。
だって、死にたかったんだもの。
消えたかったんだもの。
誰にも、止める権利はないでしょう?
最後に聴こえた声が、私自身のモノだとしても。
「さよなら」
地面にぶつかる寸前に、私は全ての人間に、別れを告げた。