白い鳥籠
目が覚めると、そこは見知らぬ部屋の中だった。
寝ぼけつつも室内を見回すと、真っ白な部屋の中には、小さな冷蔵庫とベッドだけが置かれていて、私はベッドの上に居た。
どうしてこんな所にいるのか、全く覚えがない。
だって、昨夜眠りについた時には、私は自分の部屋のベッドに居た筈なのだから。
戸惑いを覚えつつも、私は起き上がってベッドから降りようとした…途端、何かに足を取られてベッドに引き戻された。
「…え?」
足元に目をやった私は、そこにロープが巻かれている事を知った。
目でロープを辿ると、ベッドの端にくくりつけられている。
どうして?
私は驚きながらも、ロープを解こうとしたが、それはかたく結ばれていて、なかなか外れない。
頭が混乱してくる。
どうして?どうして?どうして?
疑問符ばかりが頭に浮かび、私は必死にロープを解こうともがいた。
逃げなきゃ。
本能がそう言っている。
気持ちばかりが焦る。
完全に目は覚め、恐怖心だけが胸を占めていく。
どれ位そうしていただろう?
ようやく、ロープが外れかけた時、部屋の外に足音が聞こえた。
私の動きが止まった。
助けが来たなんて思えない。
きっと、私をここに連れて来たヤツに違いない。
私は、直感でそう思った。
どうしよう?
でも、まだロープは外れていない。
来た───
足音は部屋の前で止まり、ゆっくり扉が開かれた。
「お目覚めですか?」
部屋に入って来たのは、意外にも優しそうな、若い男性だった。
「あ…」
上手く声が出せない。
男は私の足元を見ると、優しげな声で言った。
「おや、足が痛かったんですか?そんなにきつくは縛らなかったと思うんですが…寝相が悪かったんですかねぇ?」
何…?この男…なんでこんなに落ち着きはらってるの?
段々と、怒りが沸いて来る。
「ここは何処?」
私は、低い声で言った。
「貴女の部屋ですよ」
それが当然だという事のように男は答える。
「家に帰して」
「何を言ってるんです?貴女の部屋はここでしょう?」
「ふざけないで!家に帰してよ!?」
「…困った人ですねぇ…貴女の部屋はここだと言っているでしょう?」
「馬鹿な事言わないでよ!ここが私の部屋なわけないじゃない!?」
「…そう言われましてもねぇ…」
男は、困ったような顔をしている。
「じゃあ何で私の足にロープなんかがついてるのよ!?」
「それは貴女が逃げ出さないようにする為でしょう?」
男が顔色も変えずに言った。
「何言ってるの!?」
この男、頭がおかしい。
それは、こんな事をする位なんだから、まともな訳はないのだけれど。
「もう少し眠ったらどうですか?貴女疲れているようですし」
「疲れてなんかいないわよ!」
「…困りましたねぇ」
男はそういうと、部屋を出て行こうとした。
「何処行くのよ!?」
「またすぐに戻って来ますよ」
男は笑顔でそういうと、部屋から出て行ってしまった。
「何なのよ!?」
私はベッドにあった枕をドアの方に投げつけると、どうしようもなしに座り込んだ。
状況が全く理解出来ない。
寝ている間に連れ出されたのだろうけれど、家に居た筈の両親はどうしたのだろう?弟は?
近所の人は、誰も気付かなかったんだろうか?
そうこう考えている内に、男がトレーを持って戻って来た。
「お腹、空いてませんか?朝食にしましょう」
トレーの上には、ご飯とお味噌汁、焼き魚などが乗せられている。
そういえば、昨日の夜はご飯も食べずに寝ちゃったんだっけ?
お腹空いたな…
私はそう思いながらも
「お腹なんて空いてないわよ!」
と怒鳴った………でも、
ぐぅ〜〜〜…
正直な私のお腹は、空腹を訴えていた。
男はクスリと笑うと、トレーを私の前に置いて、また部屋を出て行ってしまった。
毒が入っているのかも?
私はそう思いながらも、出された食事を食べた。
意外とおいしい。
一体誰が作ったのだろう?
お腹が空いていたせいか、食事を残さず食べてしまった。
これから一体、私はどうなってしまうんだろう?
家に帰りたい…でも、どうやったら帰れるのか、その前に、ここからどうやって出ればよいのかわからない…。
あの男も、食事を持って来て以来、この部屋には現れない。
もうどの位の時間が過ぎたのだろう?
時計も、窓すらもないこの部屋では、知りようもない。
不意に、涙が込み上げて来た。
私は、しゃくりを上げながら泣いた。
泣いたって、どうにもならないのだろうけれど。
一体あの男は、何が目的でこんな事をするのだろう?
何も、わからない。
不意に、変な感覚が私を襲ってきた。
「…何?」
身体が熱くなってくる。
はぁ…っ
…はぁっ…
呼吸が荒くなる。
…やっぱり、さっきの食事、何か入ってたの?
足音が聴こえて、男が部屋に入って来た。
「そろそろ薬が効いて来る頃だと思いましてね」
男が言った。
薬?
やっぱり、何か入ってたの…?
「…あ…なた…何…したの?…」
私は途切れ途切れになる声で聴いた。
「何でしょうね?」
男はクスリと笑って私の頬に手を触れた。
びくっ…
「…やっ…触ら…ない…で…」
手を払おうとするけど、上手く力が入らない。
男が私の首筋に息をかける。
「…あっ…」
ゾクっという感覚がして、私は声を上げる。
何なの?これ?
男は、首に口を付けると、どんどん下の方に向かって私の身体にキスをしてくる。
「…やっ…」
抵抗したいのに、抵抗出来ない。
思考回路が、マヒしていく。
男は私に口付けたまま、ゆっくりと私の衣服を脱がしていき、私の胸の突起を弄り始めた。
びくっ……びくっ…
身体が痙攣する。
今まで感じた事のない感覚が、私に襲いかかる。
やだやだやだ。
心は必死に抵抗しているのに、身体だけが反応する。
「…んっ」
甘い声が、口から漏れる。
こんなの、私じゃない。
男が片手で私の胸を弄りながら、もう片方の手で内股を擦り出す。
「…っ…やっ」
頭の芯が痺れてくる。
ヤダ。ヤダ。ヤダ。
心ではそう思っているのに、身体の力は抜けていく。
抵抗出来ない。
男の手は、そのまま私の陰部へと伸びていく。
「あっ…や…だ…」
男がその場所に触れた時、私の身体が、大きくびくんと痙攣した。
「…おや?もうイッてしまったんですか?」
男がニヤニヤ笑いながら、私に言う。
頭の中が白くなって、何も答えられない。
「フフ…お楽しみはまだこれからですよ」
男はそういうと、まだヒクヒクと痙攣するソコに、指を入れた。
「……んぁっ…」
その感覚に耐え切れずに、声が漏れる。
嫌だよ……助けて…助けて…助けて………
心の中で繰り返す。
「コレ位濡れていれば大丈夫でしょう」
男はそういうと、自分のズボンを脱ぎ始めた。
何なの?まだ何かするつもりなの?
ボーっとしかける頭を必死に覚ましながら、私は男に目で訴える。
「…っ痛……」
突然の痛み。
「…やっぱりまだちょっと痛いですかね」
男はそう言いながらも、ゆっくりと動く。
息が止まりそうな痛みは、少しずつ快感に変わっていき、漏れる声は甘い声へと変わっていく。
「…んっ…ぁ…っあ……」
快楽だけが頭を支配して、何も考えられなくなる。
どの位の時間が過ぎたのか…
気付いた時、私は変わらず、ベッドの上にいた。
あれは夢だったの?
一瞬そう思ったけれど、私の足には、ロープが付いたままだった。
目の前には、食事が置かれている。
…また、何か入っていたらどうしよう?
それでも、私の身体は食物を欲していた。
空腹に耐え切れず、食事を食べる。
悪夢が続く予感を、感じながらも…