【ある晴れた日に】
うふふ。
わくわくするわ。
誰が私を、抜いてくれるのかしら?
よく晴れた、日曜日の事だった…。
「おい理恵(りえ)! 庭が雑草でいっぱいじゃないか!」
僕は花と一緒に庭に広がる雑草を見て、理恵に言った。
「わかってるわよそんな事! 私だってこの子の世話とかで忙しいのよ! あなたがやればいいでしょっ!」
このところ妻の理恵は、やけにイライラしているようだった。
亜矢(あや)が産まれて半年。
産まれた時は可愛いと騒いでいた理恵だったが、毎晩の授乳や夜泣きで疲れているようだった。
「…じゃ、僕がやってくるよ」
そう言って立ち上がる。
僕だって、毎日仕事で疲れてるんだ。
その言葉を呑み込んで。
庭に出て、草むしりを始める。
オギャァ───ッ
亜矢の泣き声が、家の中から聞こえた。
亜矢はよく泣く子だった。
ふと悪寒がはしる。
別に、何も変わった所はない。
猫でも隠れてるかな?
僕は思った。
僕は猫が嫌いだ。
亜矢の泣き声が止んだ。
少しして、理恵が庭に出て来た。
「…私も、やるわ」
そう言って黙々と草を抜き始める。
様子が少しおかしい。
「おい、亜矢は?」
「眠ったわ」
「そうか…?」
「永遠に…」
そう言って、理恵は少し笑った。
「───!? おい! それって…」
そう言った瞬間、この世のものとは思えない声(?)が聞こえた。
見えたのは、理恵が抜いた雑草…いや、アレは!?
───それ以上何も考えられないまま、僕は闇に落ちていった…。
理恵が抜いたものは、マンドラゴラだった。
抜いた時に悲鳴のような音を出し、聞いた者は死ぬという、あの、恐怖の植物。
───その日、その家には3つの死体が転がっていた。