【黒猫】
目が覚めると、周りの景色が変わっていた。
変だな?
私ちゃんと布団で寝てたハズなのに、どうして外にいるんだろう?
疑問に思いながらも、私は家に帰る事にした。でも…
立てない!?どうして?
ちゃんとバランスが取れない…そんな事よりも、地面がやけに近い。
自分の身体じゃないみたい。
私は恐る恐るそばにあった水溜まりを覗き込んだ…。
───っ!?
そこには、見慣れた自分の顔ではなく、1匹の黒猫が映っていた。
どうして?
私、猫になっちゃったの?
私は少しふらつきながらも歩き出した。
2本ではなく、4本の足を使って。
私が猫になってしまったのなら、私の部屋には…私は、何処にいるんだろう?
落ち着いていられるような状態じゃないのに、私は理屈的な事を考えていた。
家に向かって歩き出した私を、小さな子供が止めた。
「おい!こんな所に猫がいるぞっ!」
周りにたちまち子供達が集まって来る。
───逃げなきゃ!?
私は咄嗟にそう思って駆け出した。
子供達が後を追って来る。
私は必死で逃げた。
子供達の無邪気な顔の中に、殺気を感じていた。
「あ───っ!」
1人の男の子が叫んだ。
驚いて足を止める。
目の前には、1台のトラックが迫って来ていた。
ドンッ
私の…黒猫の身体は宙に投げ出された。
スローモーションのように、景色が動く。
その中に、私は私の姿を見ていた。
その姿が一瞬不敵に笑ったような気がする。
…地面に落ちた時には、もう私は死んでいた。